1.相続の基本知識
1)相続手続きの流れ
- 相続とは亡くなった人の財産が他の人に引き継がれる事をいいます。預貯金や不動産のプラス財産のみならず、借金等のマイナスの財産も引き継がれます。
- 相続には2種類あり、「遺言による相続」(遺言書がある場合)と「法定相続」(遺言者がない場合、法律の定めによる相続)があり、法定相続人が具体的に財産を分ける手続きを「遺産分割」といいます。
- 死亡するとまず遺言書の有無を確認します。自筆証書遺言であれば、勝手に開封することはできません。家庭裁判所の検認手続が必要となります。また、公正証書遺言であれば、公証役場に照会することになります。
- 遺言書がある場合の相続手続(遺言による相続)
- 遺言書がない場合の相続手続(法定相続・遺産分割)
- 相続税の申告
- 負債の承継
それでは、遺言書がある場合と、遺言書がない場合の相続手続きを説明します。
遺言で指定された人が遺言で指定された財産を取得します。
遺言書を使って、不動産の名義変更や預貯金の払い戻し・名義書換えができます。但し、他の法定相続人の遺留分を侵害し遺留分減殺請求権を行使された場合には、遺言の指定どおりの相続が実現しないこともあります。
遺産分割では、まず、相続人間で誰がどの財産をどのような割合で取得するか協議します。この遺産分割協議には、相続人全員が参加する必要があり、結果を遺産分割協議書として作成します。
遺産分割協議がまとまらなければ、家庭裁判所の調停・審判を経て、法定相続分を基準として、遺産分割が行われます。
遺産分割協議書や、遺産分割の調停調書・審判書を使って、不動産の移転登記や預貯金の払い戻し・名義書換えを行うことになります。
遺言によるか、遺産分割によるかを問わず、財産を取得した人は、相続開始を知った日の翌日から10カ月以内に、相続税の申告・納付をしなければなりません。但し、相続財産が基礎控除額に満たない場合は、申告は不要です。
基礎控除額は、現在、5千万円+1千万円*法定相続人ですが、6割に減額することが政府で検討されています。
マイナスの財産(借金等)がある場合は、遺言書の有無・内容にかかわらず、法定相続人が法定相続分に応じて、承継することになります。相続人間の協議で、相続する負債の割合を決めることはできません。(決めても、相続人間では有効ですが債権者に対しては対抗できません)
相続人が負債を承継しないためには、相続人となったことを知った日から3カ月以内に、家庭裁判所に、相続放棄あるいは限定承認の申述をすることが必要です。
*用語の説明
- 生前の被相続人は、遺言などの意思表示により相続財産を自由に処分できますが、反面残される家族の生活を脅かす可能性もあるので、その相続人の権利をある程度保護するためにあるものが遺留分です。遺留分とは法律の定めにより相続人が相続できる最低限の割合のことで、その割合は以下のようになります。
- 配偶者・直系卑属のどちらか一方でもいる場合 ― 相続財産の2分の1
- 直系尊属だけの場合 ― 相続財産の3分の1
- 兄弟姉妹 ― 遺留分はありません。
- 遺留分を侵害されている相続人は、遺留分を侵害している受遺者や受贈者、あるいは他の相続人に対してその侵害額を請求することができます。これを 遺留分減殺請求 といいます。
遺留分が侵害されている者は、自分自身が減殺請求してはじめて遺留分を取り戻すことができるのであって、請求しなければ、遺贈などを受けた者がそのまま財産を取得することになります。
遺留分の減殺請求は、遺留分権利者が相続の開始を知り、被相続人の財産の贈与又は遺贈があった事実を知ったことに加えて、その贈与又は遺贈が遺留分を侵害していることを知った時から1年以内 にしなければなりません。また、相続の開始の時から 10年 を経過したときに消滅します。
- 相続放棄とは、被相続人の財産のすべてを放棄し、一切の財産を相続しない方法です。亡くなった人の遺産より借金のほうが明らかに多い場合には、この方法を選択したほうがよいでしょう。
- 限定承認とは、相続人が相続によって得た財産の範囲内で被相続人の債務を弁済することを条件として相続する相続の形態です。
次号は相続の基本知識として、「法定相続人と法定相続分」について説明します。
